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万葉集 巻十一 2421

来る道は石踏む山の無くもがもわが待つ君が馬躓くに

***

(あなたが来る道は岩場をぬう険しい道のある山が無くて欲しい。
 私の待つあなたの乗った馬がつまずいてしまうから。)

恋人の訪れを待つ側の歌。
「行き(=訪れるとき)」の道中で、
つまずかないようにと心配されている。

つまずくことを心配するのは、なんでなのだろう。
怪我をしないように?
足場の悪い道だと、恋人が諦めて帰ってしまうから?

なんでなのだろうと迷うことすらなく、
恋人や恋人の馬が怪我することを心配しているためだと思っていたが…。
どうも違いそうだ。

万葉集中の他の歌を見てみると、
恋人や家族が思っていることによって、
つまずくと詠われている歌もある。

特に、「帰り」につまずくのは、
ためらいの意味が含まれていたり、
共寝をして別れてきたばかりの恋人が思っているからだと
考えられていることが、
万葉集中の他の歌から分かる。

つまずくという語は、"妻(ツマ)が付く(ツク)"なのだろう。
通常、見かけるのは、"爪突く"だとする説明。

相手が自分を思っていることによって、
自分の身に変化が起きるのは、夢と同じだ。

よく言われる話だが、古代では、
恋人(もしくは異性)が自分のことを思っているために、
夢に恋人が出てくると考えられていた。

恋人が思っているからつまずくのであれば、
「行き」につまずいても良さそうなものだ。
なんで、つまずかないようにと、歌を詠んだのだろうか。

これは、
自分以外の他の恋人の思いによってつまずき、
そちらの恋人のほうに行ってしまうことを避けるために、
身を案じているからだと説明することができるかもしれない。



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くるみちは いはふむやまの なくもがも
わがまつきみが うまつまづくに
by hapipi_hapipi | 2006-08-26 06:39 | 動物=本文=
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