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万葉集 巻三 428

隠口の泊瀬の山の山の際にいさよふ雲は妹にかもあらむ

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(隠口の泊瀬の山のあたりをただよっている雲は、愛しい人でもあろうか。)

この歌も人麻呂の歌。

火葬の煙と、山にただよう雲を重ねている。
愛する人の魂が、すーっと消えずに、残っている。

一つ前の208番歌もそうだが、
死者の魂が山に入っていくという、山中他界観を示している。
古代の人々が死をどのようにとらえていたかが分かる。

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大切なものがふえていくと、失うことの恐さもふえていく。
大切なものを失ってしまったとき、
どうやってそれを説明し、受け入れていくか。

208番歌に戻ってしまうが、208番歌は、
黄葉の美しさに惹き寄せられ、山に入り、道に迷ってしまったために、
愛する人がこの世からいなくなってしまったと、死の理由を説明する。

自分の意思ではなく、
相手(人・事物・事象etc)に惹き寄せられてしまうということはあると、
私は思っている。

自分の意思ではないと言っても、
こちらの側に、惹き寄せられてしまう態勢があるからだけど。

現代の考え方では、深層心理だと説明されてしまう。

宗教っぽいが、
簡単に惹き寄せられないような、強固な魂を作りたい。

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こもりくの はつせのやまの やまのまに
いさよふくもは いもにかもあらむ
by hapipi_hapipi | 2006-10-20 08:16 | 空=本文=
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