ことばの呪性(1)

*古橋信孝『古代和歌の発生 歌の呪性と様式』東京大学出版会 1988-1より部分引用

 われわれが古代の文学から気づかされることのひとつにことばの呪性がある。古代の歌のことばは、神・信仰の抽象度が比較的低いため、ことばの呪性がわかりやすくみえている。

 歌を読むのに、いくら民俗学や文化人類学などを応用してみても、結局は辞典的な意味の当て嵌め的な解釈になってしまっている場合がほとんどだ。それはほとんど"意味"のレベルで一面的にことばを解してしまうきわめて近代的な見方に由来している。近代は時間と空間の個別性を抽象し、なんでも普遍の相において把握しようとする世界だから、誰にでも通用する部分、つまり"意味"がことばにおいても前面に取り出されてくる。古代の歌もそういう近代的な部分で読みがなされてしまっている。しかしことばは、簡単な分け方をすれば、"意味"と"音"からなっているから、意味の部分だけ取り出してみても、それでは一面でしかないことになる。しかもその意味自体も、近代の側から解しうる部分以外は捨象されてしまっている。
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by hapipi_hapipi | 2007-02-13 08:23 | 言葉
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